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2019-09-29

「赤道祭」の境界線の洗礼

こんにちは、タロットブログ「アントレ」へ、ようこそ。

主に欧米の船乗りに伝わる伝統に「赤道祭」というものがあるそうです。

ヨーロッパ大陸から出航して、荒海を通り、赤道を通過するまでの長距離航海は過酷さを極めました。

特に赤道の辺りの無風地帯では、船の航行が遅くなり、船乗りたちは大きな不安にみまわれました。

そのような中で「赤道祭」と名づけられた一種の通過儀礼が行われ、未熟な船員たちに、レクリエーションや儀式による意識変容を通して熟練船乗りの仲間入りをするきっかけを与えました。

伝統的な「赤道祭」では、儀礼未経験の船員は海王ネプチューンからの召還を受けます。

海王の王国に入るためのテストとして、小麦粉やバケツの水の嵐など、航海の苦難に模したものに晒されました。

それらに耐えると、ネプチューンやトリトンに安全を祈願し、その役を演じている長老的船員の承認を受けます。

そして身を清めると儀礼通過の証明書を受け取り、熟練船乗り集団の一員として生まれ変わるのです。

フランスでは、儀礼通過者はその栄誉を称して「海の騎士(Chevaliers des mers)」と呼ばれるそうです。

(「Terres d’Aventure」のHPを参照)

タロットで船と言えば、この『運命の輪』です。

水色の面上に木製らしい物体が浮かんでいます。

舵輪に見立てられるような輪っかもあり、その上の止まり木は見張り台のようにも見えます。

波に揺られている中で、搭乗者の多くは両手両足で船にしがみついて上を下への大騒ぎです。

船の天辺にひとりだけ落ち着き払っている者がいます。

立派なあごひげを蓄え、冠らしいものを被っているので、この船のキャプテンなのかも知れません。

どっしりと構えているようですが、一番動かないのは輪っかの中心の部分であり、何かあったときには天辺から落ちてしまうおそれがあります。

「赤道」とは、北半球と南半球で、いわば地球が反転する象徴的な線です。

北半球と南半球では、地軸の意識から、いわば天の方向が逆転しています。

「今の自分は、北半球で過ごしていた自分とは、向いている天の方向が逆」なのです。

「ぼくの頭があった方に、今ぼくは足を向けている。足のあった方に頭を向けるという新しい状態に対応しているぼく」

価値観の転換は「新しいバージョンの自分」を意識する転換をもたらしたでしょう。

「赤道祭」は「境界線の洗礼」という呼び方ができます。

ある「線」「境界線」を通過したことに大きな意味があるのです。

境界線の通過と共に価値観の転換が起こるのです。

それが描かれているカードに『神の家』があります。

『神の家』に入る人は世俗から神聖な世界へと境界線を通過します。

扉を通過する人は神聖な「境界線の洗礼」を受け、意識の転換に晒されます。

『神の家』に入ることになった者は、社会的なパーソナリティを超越する価値観を受け入れることになります。

(これは元型の意味においてであり、リーディングにおいては別の意味も象徴します。)

価値観の大変な変換なので、建物の前の人がひっくり返っています。

しかしその人の顔をよく見るとちょっと微笑んでいるのが見て取れます。

(この挿絵には表情が描かれていないので、フィリップ・カモワン・スクールのHPでご覧ください。)
カモワンとホドロフスキーが復元したカード

『神の家』に入る準備をしてきた人には、大変ではあっても、その転換はうれしいものなのでしょう。

探求の旅を象徴するタロットには、頭を低くした姿勢、逆さまの姿勢のカードが何枚も出てきます。

そうやって何回もの価値観の大転換を経験しながら、わたしたちは完成の境地に近づいていくのです。

◇◇◇ アントレ ◇◇◇

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