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2020-12-18

カモワンタロットの真実

episode 5

もう4年前になりますが、2016年にアレハンドロ・ホドロフスキー著の「タロットの宇宙」が出版されました。
これはすでに2004年にフランス語版で出版された「LA VOIE DU TAROT」の日本語版です。

その後、英語版「THE WAY OF TAROT」が出版されましたが、日本語版がでるまでにずいぶん時間がかかりました。
(仏語版、英語版ともに、タイトルを和訳すると、「タロットの道」です)

期待していた人がたくさんいたのではないかと思いますが、この本には、リーディングの動的展開法であるカモワン・メソッドについては書かれていません。

以前にも書きましたが、あらためて書いておきます。
カモワンタロットは、カモワン版マルセイユ・タロット、もっと正確に言うとホドロフスキー・カモワン版マルセイユ・タロットと言います。

カモワンタロットは、フィリップ・カモワンとアレハンドロ・ホドロフスキーの二人によって、数多くの伝統的マルセイユ・タロットを研究・分析された結果、失われた図柄などの発見をしながら、非常に高い精度での復元が行われ、今から約20年前の1998年に発行されたものです。

ホドロフスキーは著名な映画監督であり、1970年の『エル・トポ 』は有名ミュージシャンたちに絶賛され、現在ではカルトムービーの金字塔のひとつとされています。
タロットに関しては「タロットの宇宙」の著作以前にも多くの本を出版しているタロット研究家です。

一方で、フィリップ・カモワンの名を知る人はタロット愛好家や収集家などのコアなタロット・ファン以外では日本にそう多くはいないでしょう。
ただし、フィリップ・カモワンはコンヴェル版で有名な天才彫り師二コラ・コンヴェルの子孫であり、秘伝を受け継ぐ正統な伝承者です。

(カモワン家は、18世紀から20世紀まで、タロット発行において世界屈指のマルセイユのカードメーカーでした。今はタロット博物館となったカモワン工房の建物がマルセイユ市内に遺されています。)

タロットに描かれた図柄の内容には驚くような秘伝が隠されており、代々受け継がれ、師から弟子へと伝授されてきています。
僕自身もフィリップ・カモワンからフランスでの講座と日本での講座で秘伝を教わりました。

直に教わったことのある僕から見て、フィリップ・カモワンという人は隠者のような感じです。
SNSのアカウントはありますが、ほぼ発信していません。
ホドロフスキーのようには活発にメディアに出ることはあまりしないようです。

あるとき、ホドロフスキーがフィリップ・カモワンに「本が出版されたら私が世界各地で宣伝してあげる」と言ったそうなのです。
それが実現していないのは、頼んでいないからなのではないかと僕は推測しています。

そういったこともあってか、ネット上では「カモワンタロットの中枢はホドロフスキーが考えた」という誤解が生じていますが、そうではありません。

カードの秘伝自体に恣意的に手を加えたりはせず、ホドロフスキーが所蔵していた数多くの古いマルセイユ版とフィリップ・カモワンが所蔵していた二コラ・コンヴェルの版木をもとに、忠実な復元作業を行い、欠落してしまっているが本来あったはずだと思われる象徴を元に戻し、四色刷り印刷機で失われていた色彩の秘伝を復元したものなのです。

ただ、二人のマルセイユタロットに対する解釈のアプローチにはかなりの相違があるようです。

ホドロフスキーはカモワンタロットを復元する以前にはポール・マルトー版の研究・実践者で、カバラにも相当詳しい人のようです。
一方、マルセイユ・タロットの秘儀の継承者であるフィリップ・カモワンはタロットの本来の形を復元・伝承することを使命とし、フィリップ・カモワンしか知りえないことを知っています。

これらの背景によって、ホドロフスキーのタロット解釈は長年のオリジナル研究が反映されています。
フィリップ・カモワンはマルセイユ・タロットの秘伝をカモワン・メソッドと名づけた動的展開法で活用する方法などを教授しています。
カードをどのように活用するかについては、お互いに独自性を尊重し合うという形になっているようです。

フィリップ・カモワンは2018年に長年の成果をついに書籍化しました。
(その話は、前に書いていますのでそちらをご覧ください。)

ホドロフスキーの「タロットの宇宙」はなかなか難解で、厚みもすごい本です。
タロット愛好者にはそれまでの解釈に深みを増すことにつながるかも知れません。
ただし、上記のように二人のスタンスには異なる部分があるので、カモワン・メソッド初心者には混乱する恐れがあるため、最初の内は読まない方がいいのではというのが僕の考えです。

フィリップ・カモワンの本はフランス語ですが、フルカラーなので、スクールで学んだ人には「ここにあのことが書いてある」と把握できるぐらい、体系的に書かれています。
それにしても英語版、日本語版の出版が待ち遠しいですね。

今年は、世界的にコロナの影響があり、フランスは何度もロックダウンをするなどの事態になっています。
フィリップ・カモワンも今年は講座をしていないようです。

そんな中、ホドロフスキーは、インスタ・ライブでカモワンタロットの公開セッションやセミナーをやっています。
これでカモワンタロットがより広まるといいのですが、インスタ・ライブはスペイン語なので残念ながら僕にはちんぷんかんぷんです。

でもインスタをやっている人は、ホドロフスキーをフォローすれば見ることができますよ。
スペイン語が分かる人が身近にいるといいですけど。

では。

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