ネクタルを注ぐガニュメデス☆12星座の神話

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

年末がだんだん押し迫ってきましたね。

気ぜわしい年末だからこそ、星の話で天に意識を向け、一休みしてみるのもいいのかも知れません(^-^)

先月、先々月と黄道十二宮の星座をタロットの象徴で見ていく試みをしました。

『世界』の四聖獣の牛と獅子で見立てられる「おうし座」と「しし座」です。

今回は、右上に描かれた四聖獣の天使で見立てられる「みずがめ座」でトライしてみましょう。

みずがめ座はトロイアの王子ガニュメデスが神々の献酌官として天に上げられた姿とされています。

「神々の献酌官」を調べると、女神ヘーベの名前が出てきます。

おうし座としし座のときにも採用したルールに則りましょう。

黄道十二宮は基本的に男性区分のサインと女性区分のサインが交互に配置されていて、牡羊座が男性、牡牛座が女性・・・と進んでいくと、みずがめ座は男性区分のサインです。

ということで、みずがめ座の神話の解釈は男性であるガニュメデスを主人公として見ていきましょう。

☆ ☆ ☆

みずがめ座の神話

神々の献酌官

元々、神々の献酌官を務めていたのは、ギリシア神話の主神ゼウスとその妻である最高位の女神ヘラーの娘とされる女神ヘーベでした。

ヘーベは若さや活力を司る女神で、ネクタルと呼ばれる飲み物やアンブロシアと呼ばれる食べ物を神に提供します。

それによって若返らせたり、定命者を不死にしたり、傷を癒したりしていました。

あるとき、ヘーベが献酌官の職を辞すことになりました。

ヘラーの指示でヘラクレスの誕生を遅らせる工作に協力したことから、怒ったゼウスによって献酌官の任を解かれたとも、

神として天に上げられたヘラクレスがヘラーと和解した際にヘーベが妻として与えられたことで献酌官を辞したともいわれています。

そういうことで、神々の宴に欠かすことのできない不老不死の糧を供する献酌官がいなくなってしまいました。

そこでゼウスは人間の中で最も美しい少年に目を留めました。

ガニュメデスの連れ去り

その少年はガニュメデスという名前のトロイアの王子で、フリギアの羊飼いであったともいわれています。

ガニュメデスはトロイアのイダ山で羊の世話をしていました。

イダ山は、女神キュベレー崇拝の地であったり、ヘルマプロディトスや「パリスの審判」で有名なトロイアの王子パリスが育てられたりした聖なる山です。

ゼウスは聖なるイダ山にいるガニュメデスを捉えて天へと連れ去りました。

ガニュメデスを連れ去ったのはゼウスではなく、暁の女神エオスなど他の神であったともいわれています。

天に置かれるガニュメデス

ゼウスはさらってきたガニュメデスに神々の献酌官の役割を与え、そのための永遠の若さと不死を与えました。

「ガニュメデスに雄鶏を与えるゼウス、冠を被せる女神、ヘーベ」(黒絵式アンフォラ:紀元前510年頃:バイエルン州立博物館)

ゼウスはヘルメスを遣わし、ガニュメデスを連れ去った代償として、一対(あるいは二対)の神馬を父親のトロスに与えました。

トロスは、息子が不死になり、神々の献酌官という名誉ある地位につくということを慰めにしました。

ガニュメデスが酌をする姿はみずがめ座として夜空に今も輝き続けています。

☆ ☆ ☆

以上がみずがめ座の神話です。

神話や民話には後世に尾ひれがつけられることがあります。

ガニュメデスを連れ去ったのはゼウスが遣わしたワシ、あるいはゼウスが化身したワシであるというエピソードがありますが、

その部分は初期の神話にはなく、みずがめ座とわし座が近い位置にあることから後世につけたされた可能性があるということで、今回はその部分を除いています。

(ちなみに『世界』のカードの右上の黄色い鳥の象徴はわし座から来るものではありません。)

また、ヘーベが神々の前で転んでみっともない姿になったことで献酌官の役割を取り上げられたというのは、16世紀のイギリス国教会の創作だといわれていますので、そちらも除いています。

すっきりさせた状態のものをタロット等の象徴を通して、次回、見ていくことにしたいと思います(^-^)

ソフィア

カモワン・タロットのリーディングを学びたい方はスクール・ページへどうぞ。

獅子を制御するパワフルな『力』の乙女☆星の神話とタロット

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

今回は、黄道十二宮の神話をタロットの象徴を通して見ていくシリーズの獅子座の回です。

前回のブログにギリシア神話のヘラクレスと格闘した「ネメアーのライオン」のお話を載せています。

読まれていない方は、まずそちらからご覧ください。

『ヘラクレスvsネメアーのライオン☆12星座の神話』

ネメアーのライオンのお話をタロットの象徴でさらっていきましょう。

☆ ☆ ☆

ライオンは『力』と『世界』に

まずは、12功業においての「ネメアーのライオン」という題名に基づき、

マルセイユ・タロットの大アルカナ22枚を見渡すと、ライオンらしき象徴がまず『力』と『世界』に見当たります。

『世界』の落ち着いた様子のライオンはゼウスによって天に上げられた後のライオンの姿です。

『力』のカードを見ると、ヘラクレスの怪力に遜色ないパワフルな乙女と荒々しそうなライオンが描かれています。

何といっても、このカードの名称は『力』<LA FORCEラ・フォルス>です。

乙女は、ライオンを腕で制御するという常人では考えられない行動をしています。

『世界』のライオンがみんなと調和して輪になっているのに対して、『力』のライオンは歯をむき出しにしています。

ネメアーのライオンのように獰猛そうですが、乙女に抵抗しつつも制御されているようです。

パワフルな棍棒による攻撃

弓矢では手ごたえを得ることができませんでしたが、ヘラクレスは得意の棍棒でネメアーのライオンを退治するきっかけをつかみました。

棍棒は『杖(火)』の象徴です。

ヘラクレスの棍棒はオリーブの木で出来ていると言われていますが、前回の牡牛座のイーオーがつながれていたのもオリーブの木でした。

オリーブは採油植物であり、オリーブオイルで火を灯すことができます。

ここでは「光」を得ることを示唆する象徴です。

光を得る(明晰さ・賢明さ)棍棒で、ヘラクレスはネメアーのライオンの頭を一撃します。

『力』のライオンの胴の下を見ると、棍棒のような黄色い象徴が紛れているように見えます。

ライオンはすでに棍棒で光の攻撃を受けた後なのかも知れません。

ヘラクレスの一撃にたまりかねたネメアーのライオンは洞窟の中に逃げ込みましたが、それは「光」に対する「暗がり」、「明晰さ」に対する「頑迷さ」なのかも知れません。

ライオンを追って洞窟の中に入ったヘラクレスも「暗がり」で、自分の中の「恐れ」や「頑迷さ」に向き合うことになったでしょう。

皮に切れ込みを入れるパワフルな爪

ヘラクレスは、強靭なライオンの皮にナイフで切れ込みを入れることができず、はぐことがませんでした。

通常、狩人たちはナイフで獲物をさばきます。

ナイフの刃でも、矢の鏃でも貫通できないネメアーのライオンの強靭な皮は、『剣(風)』が象徴する知性というアプローチだけでは太刀打ちできない問題を象徴します。

まるで理路整然と説明しても分かってくれない頑固な人物を相手にしているようです。

その困難な局面を女神アテナのアドバイスを受け入れることによって、ライオンの爪を使い、切れ込みを入れてはぐことができました。

アテナは知恵と戦略を司る戦いの女神なので、『剣』の徳性も『杖』の徳性も授けることができます。

理論と衝撃を一度に与えられます。

鋭さがありつつ強さがある爪は『剣』と『杖』の両方の性質を兼ね備えているように見受けられます。

『力』のライオンの体を見てみると、上半分と下半分で色が異なります。

もしかすると、切れ込みが入れられ、皮がはがれているのかも知れません。

パワフルな乙女はインパクトのある赤い爪をライオンに指し向けています。

アテナの助力を得たヘラクレスは、『剣』の象徴する「知力・理性」と『杖』の象徴する「勇気・度胸」を発揮して、暗がりの恐ろしい猛獣に対処することができました。

それによってヘラクレス自身が一皮がむけたと言えそうです。

やっぱり強い『力』

フランス語の<forceフォルス>は体の力だけでなく、勇気や精神力など、心の力も意味します。

<LA FORCEラ・フォルス>という名称は『力』の乙女が勇気や精神力をも司る女神であることを示しています。

降ってきたライオン

カモワンの「3×7タロット・マンダラ」を見ると、面白いことに気づかされます。

カードをお持ちの方はマンダラを並べてじっくり眺めてみてください。

気づくことがあるかも知れません。

(マンダラは下記リンクからご覧になれます。)

カモワンの「3×7タロット・マンダラ」

ネメアーのライオンの母親は月の女神セレネであるという説がありますが、「3×7タロット・マンダラ」を見ると、『力』の上には『月』のカードがあります。

「月が身震いをしたときにネメアーのライオンが降ってきた」というエピソードにぴったりの位置関係です。

『月』には天体のすぐ下に2頭の4つ足の動物がいます。

月の女神セレネが「母親」であるという前提で、その下にいるのがネメアーのライオンだと解釈しても、「子ども」なのでまだたてがみが生えていないようです。

(ヘラクレスはネメアーのライオン退治の前に、キタイロンのライオンを退治しています。それを物語るように獅子座の上には小獅子座があります。)

モロルコスの羊についてですが、羊の象徴はいずれ牡羊座について調べるときのための楽しみにしましょう。

ヘラクレスは牡羊座の神話のアルゴー船の乗組員の一人でもあります。

神話とタロットとの繋がり、本当に興味深いですね(^-^)

ソフィア

※ライオンの詳しい象徴や『剣』『杖』などの四大元素は、カモワン・タロットの初級「手品師コース」で扱われています。

カモワン・タロットのリーディングを学びたい方はスクール・ページへどうぞ。

ヘラクレスvsネメアーのライオン☆12星座の神話

こんにちは、アントレへ、ようこそ。

前回は牡牛座のイーオーの神話を元に探索しましたが、

牡牛座をどの神話に見立てるかということで様々な意見があります。

アストロロジーにおいての黄道十二宮の基本的なルールでは、牡羊座が男性、牡牛座が女性、双子座が男性・・・と交互に配置されているところから、

女性に区分されている牡牛座には、ニンフの女性であるイーオーが牛になった神話がよい選択肢なのではないかと思っています。

今回は『世界』のカードで牛の隣側にいるライオンに焦点を当てましょう。

獅子座です。

獅子座は男性に区分されます。

たてがみのない雌ライオンではなく、ふさふさしたたてがみのある雄ライオンを想像して進めていくことができます(^-^)

☆ ☆ ☆

獅子座のエピソードである「ネメアーのライオン」は、ギリシア神話の中でも第一級の英雄であるヘラクレスのお話の一つです。

ヘラクレスは最高神ゼウスと人間の女性の間に生まれた半神半人の英雄です。

ある日、ヘラクレスは女神ヘラーに狂気を吹き込まれて、妻と子どもたちを炎に投げ込んで殺すという大罪を犯しました。

(よいことも悪いことも大きな出来事が生じた際には、大方、最高位の女神ヘラーか、最高神ゼウスがきっかけとされているので、ここは細かく考えずにいきましょう。)

ヘラクレスは罪を償うためにデルフォイの神殿へ行き、アポロンの神託を受けました。

下ったお告げは「ミュケナイ王エウリュステウスに仕えて仕事を果たせ。その後に不死になる」というもので、そこから始まるのが「ヘラクレスの12功業」です。

☆ ☆ ☆

ヘラクレスとネメアーのライオンの神話

その頃、ミュケナイ王エウリュステウスの領地のアルゴスでは、ネメアーの谷に恐ろしいライオンが住んでいて人々を苦しめていました。

ネメアーのライオンは、母親が怪物エキドナであるとも、月の女神セレネであるともされ、月が身震いをしたときにネメアーのライオンが降ってきたと言われています。

ネメアーのライオン問題に困っていた王エウリュステウスですが、英雄ヘラクレスが仕えたいと来訪したものですから、これ幸いとばかりにライオンを殺しとその皮を持ち帰ることを命じました。

ヘラクレスはネメアーの谷に赴く途中、ゼウスの神殿の森に住むモロルコスという名の農夫に出会います。

ネメアーのライオンを退治しに行くと聞いたモロルコスは、自分が飼っている唯一の羊を殺してヘラクレスをもてなそうとしました。

ヘラクレスは羊の犠牲を1か月待ってくれるように頼みます。

「自分がライオンとの戦いに敗れて帰って来なかったら自分のために捧げてほしい。もしライオンを退治できたらゼウスの神殿に捧げてほしい」と。

ネメアーの谷に到着したヘラクレスは、アポロンの神殿で授かった矢でライオンを撃ちますが、ライオンの驚くほど強靭な皮膚は矢を跳ね返してしまいます。

そこでヘラクレスは得意の棍棒でライオンに立ち向かいました。

オリーブの木で出来ているとも言われるヘラクレスの棍棒がライオンの頭に命中すると、ライオンはたまらず洞窟の中に逃げ込みました。


(ヘラクレスとネメアのライオンの戦い、ピーター・パウル・ルーベンス)

ヘラクレスは洞窟の入り口を岩でふさいで逃げ道を封じ、ライオンに挑みかかります。

ヘラクレスは格闘の末、両手でもって窒息させることで不死身かと思われたネメアーのライオンを退治することができました。

ライオンの皮を持ち帰るために、ヘラクレスはナイフを使いましたが全く刃が入りません。

すると、その窮地に気づいた知恵と戦略の女神アテナが変装してやってきて、ライオンの爪を使うことを助言します。

ライオンの爪を用いると皮に切れ込みが入り、ヘラクレスは皮をはぐことができました。

ヘラクレスがモロルコスの小屋まで辿り着くと、モロルコスはゼウスの神殿に羊の犠牲を捧げました。

ライオンの死骸を担いだヘラクレスが王エウリュステウスのところに戻ると、王エウリュステウスは恐怖のあまりに大きなブロンズの壺に飛び込んで身を隠します。

そして「これからは仕事の成果を門の外で披露し、伝令を通して報告するように」と命じたのでした。

このライオンの毛皮は、この後、ヘラクレスが身につける特別なシンボルであり続けます。

獅子座は、ゼウスが息子ヘラクレスの戦果を祝って天に上げたとも、動物の王として天に上げたとも言われています。

☆ ☆ ☆

次回はヘラクレスやライオンをタロットの中に探して、象徴をしらべていきます。

すでに「あのカードだ」と検討がついているかも知れませんね(^-^)

ソフィア

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