小さい角をもつ白い『女法王』☆星の神話とタロット

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

ようやく秋らしくなったと思ったら、1日2日くらい急に冷え込んで、ちょっと鼻風邪をひいてしまいました(^₋^ゞ

これからは体調を万全にして、冬が始まるまでの貴重な黄金の季節を楽しみたいと思います。

☆ ☆ ☆

前回のブログで書いたように、星座の神話、特に黄道十二宮の神話を通してタロットを見ることをこれからたまにしてみようかと思っています。

今回は、牡牛座として、ギリシア神話の白い牛に変えられたニンフのイーオーです。

イーオーの神話は前回のブログをご覧ください。

『イーオーは牛に変えられた☆12星座の神話』

まずはお話とタロットの象徴をザックリさらっていきましょう。

白い牛

特徴的なのはイーオーは女性で、白い牛に変えられたということですね。

タロットの大アルカナ22枚をこの条件の下で眺めてみて、目が留まるのは白い肌の女性である『女法王』です。

よく見ると、『女法王』の被る三重冠の左右には牛の角のようなものが付いています。

イーオーはヘラーの神殿の巫女でしたが、『女法王』も神殿の女神官です。

隠蔽と白さ

隠蔽しようとしたゼウスによってイーオーは白い牛に変えられました。

『女法王』も天幕によって外界から隠されています。

神殿の巫女であったイーオーが変身した白い牛の白さは、『女法王』のように奥まったところで巫女の修養をしていたことに由来するのかも知れません。

物質的隠蔽で肌の白さが作り出され、聖域での修養という非物質的隠蔽で純潔さという心理的な白さが作り出されているようです。

木につながれる

イーオーはヘラーによって1本のオリーブの木につながれました。

オリーブの木は「太陽の木」と呼ばれ、実からはオリーブオイルが採取されますが、オリーブオイルは神殿や教会の灯火などにも用いられます。

『女法王』はⅡ(2)という数をもつだけに、本来は2本柱がありそうですが、隠蔽の天幕があるために柱は半分だけ、1本しか見えていません。

同じ三重冠を被っているパートナーの『法王』のカードを見比べてみると、『法王』の後ろにも似たような柱がありますが、空色をしています。

それに対し、木の色をした『女法王』の柱はオリーブの木のように火を着けることができそうです。

イーオーも『女法王』も「明るく」なるために必要な環境に身を置いているように見えます。

最後に子どもを産む

虻から逃げまどいながら多くの国を旅したイーオーは最後にエジプトで息子エパポスを産み落としました。

『女法王』はどうやら子を宿すことができる人のようです。

『女法王』の後ろには、彼女の白い顔にそっくりの卵のような白い象徴が描かれています。

エパポスを産んだイーオーのように『女法王』が子を宿し、産み落とす日がいずれ来るのでしょう。

白い牛は天に昇る

ここから少し込み入った内容になるのでちょっとご辛抱ください。

イーオーをうるさがらせた虻についてですが、

フランス語で「うるさがらせる」という意味の言葉に<tannerタネ>があります。

<tannerタネ>はその他にも「褐色にする・日焼けさせる」「皮をなめす」という意味も表わします。

「皮をなめす」とは、生皮をタンニンなどで耐久性のある状態に加工することです。

ヘラーが送った虻はイーオーを「うるさがらせて」、隠蔽されていた場所から各地の陽の当たる場所にを放浪させ、「日焼けさせ」たことでしょう。

天幕の内側での純粋培養の学び以外のことを放浪先の各地で学んで、心身共に「なめさ」れて、巫女だったイーオーは永遠の神なる存在へと昇華したのではないでしょうか。

それが天に上げられる、星座になるということなのかも知れません。

神話とマルセイユ・タロットには親和性があり、神秘のエッセンスがたくさん含まれています。

マルセイユ・タロット、面白いですよね(^-^)

ソフィア

イーオーは牛に変えられた☆12星座の神話

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

涼しくなりつつも、また夏に戻ってしまう。

秋本番が待ち遠しいこの頃ですね。

ヨウ素(ヨード)の名前が「スミレ色」を意味するギリシア語を元につけられたということをつい最近知りました。

ギリシア神話では、スミレの花はゼウスの愛人になり、白い牛に変えられたニンフのイーオーと関連があります。

イーオーの白い牛は牡牛座の逸話として挙げられるものの1つです。

黄道十二宮の星座を中心に神話を通して、タロットを眺めていくのも面白そうではありませんか?

(黄道十二宮を表わす『世界』の空色の輪)

それでは今回はイーオーのお話から始めてみましょう。

☆ ☆ ☆

イーオーの神話

話はギリシア神話の最高位の女神ヘラーの神殿の巫女であるイーオーに主神ゼウスが手を出したところから始まります。

ヘラーとゼウスは夫婦であり、ヘラーは結婚の守護神です。

浮気を知ったヘラーは当然、関係を阻もうとしたため、ゼウスはイーオーを白い牛(未経産牛)に変えて隠蔽しようとします。

それで誤魔化されるようなヘラーではなく、ゼウスにその白い牛を贈り物にくれるよう求めました。

ゼウスはヘラーに白い牛を贈ったものの、雄牛に姿を変えて何とかイーオーに会い続けようとします。

ヘラーはイーオーを1本のオリーブの木につなぎ、百の目をもつ(あるいは第三の目をもつ、背中にも目をもつとも言われる)アルゴスに見張らせました。

アルゴスは百の目を五十ずつ眠らせる隙のない番人です。

ゼウスはヘルメスに白い牛を盗み出すように命じましたが、秘密裏に盗み出すことができません。

そこでヘルメスは竪琴あるいは葦笛の音を聞かせて眠らせました。

アルゴスはそこでヘルメスに殺されたとも、見張り番を失敗したためにヘラーに処刑されたともされています。

イーオーは見張りから解放されましたが、ヘラーが送った虻(あぶ)から逃げまどいながら多くの国を旅します。

最終的にエジプトに到着したイーオーは、そこで人間の姿を取り戻し、ナイル川の川辺で息子エパポスを生み落としました。

イーオーと息子エパポスは、エジプトにおいてのイシスと聖牛アピスの信仰に重なることになるようです。

フランスには以下の逸話もあります。

イーオーが悲しい気持ちでさまよっていると、地面から小さな花が姿を現わすのが見えました。

彼女はその花の中に自分を慰めにきた友人たちの気持ちを感じ取ることが出来ました。

その花とはもちろんスミレで、特に「三色スミレ」のようです。

フランス語の<penséeパンセ>は「思索」と「三色スミレ」を表わす同形異義語です。

☆ ☆ ☆

次回はイーオーの姿を象徴できるカードをタロットの中に探し、各象徴を調べてみます(^-^)

ソフィア

『手品師』の不思議な空色のバッグ

こんにちは。アントレへ、ようこそ(^-^)

少しずつ秋めいてきましたので、自然散策をまた始めようかなと思っているソフィアです。

今回は、わたし自身が以前から「もっと知りたい、もっとわかりたい」と思ってきた『手品師』の空色のバッグについてよく見ていきます。

タロットを学び始めると、まず出会うのが大アルカナ22枚ですが、『愚者』以外の大アルカナの21枚をトランプカード(切り札)と呼びます。

その筆頭であるのがこの『手品師』です。

筆頭のカードらしく『手品師』にはⅠ(1)の数字が付いています。

その若い数字に符合するように、人物の姿は子ども、あるいは少年のような様子です。

立っている『手品師』の顔が、座っている『女法王』の顔と同じくらいの大きさになっているので、頭が子どもらしくちょっと大きめに描かれていることになります。

髪の毛は金髪っぽく黄色で彩色されています。

ヨーロッパ系の人たちには、子どもの頃は髪が「ベビー・ブロンド」で、成長するに従って茶髪や黒髪に変わるパターンが多いのだそうです。

子どもらしく描かれた『手品師』は、伝統的に、徒弟や小姓の姿であるとされています。

徒弟とは、職業訓練制度の中で見習いに入ったばかりの身分で、日本風にいうと「丁稚(でっち)」です。

小姓とは、上位の騎士などに仕える貴族の若い子弟を意味します。

『手品師』は若い力が満ち満ちているようで、肩幅やふくらはぎには元気のいい張りがあり、密度の濃そうな体をしています。

テーブルの上にたくさん物を並べている『手品師』は物質的傾向の高い人物のようです。

物を使ってあれこれ試行錯誤しながら楽しんでいます。

テーブルに並んだ同系色の物たちに対し、少し趣が異なっているものがあります。

向かって右側の端にある手品道具のバッグは、テーブルの木肌色と反対色の空色で描かれていて異彩を放っています。

マルセイユ・タロットのカード作者たちはこのアイテムに特別の意味を込めてきているような感じがします。

バッグには、空色の袋の部分、黄色い取っ手や口金があったり、バッグの中からニョロニョロした黄色い奇妙なものがはみ出ていたりします。

手品道具入れなので奇妙な感じがしても当然ですが、袋の部分の空色は天空の色であり、天界との関りを感じさせます。

「物質的傾向が高い」「物を使ってあれこれ試行錯誤」している人なのに「天界との関り」とはどういうことなのでしょうか。

その秘密は、やはりバッグに隠れているようです。

取っ手の付け根にはオレンジの玉のような象徴があります。

日本語でも小振りな取っ手を「耳」と表現することがありますが、実はフランス語でも同様です。

耳(取っ手)が物質の象徴である玉についているバッグの持ち主である『手品師』は物に耳を傾ける人のようです。

空色のバッグにはもちろん口金のついた「口」があります。

どうやら『手品師』は物を介して神髄(本質)に耳を傾けているようです。

職人が素材と対話する、作品と対話するという表現は、プロフェッショナルな領域でよく見受けられます。

ルネサンス期の大芸術家ミケランジェロは「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。 それを発見するのが彫刻家の仕事だ」と語ったとされます。

きっと石と深い対話をしていたのでしょう。

まだ徒弟の身分である『手品師』はこれからより深い対話ができる職人になっていくのです。

マルセイユ・タロットの象徴には豊かな意味合いが隠されています。

タロットには学び深めていく醍醐味がたっぷりです。

何かと散漫だった暑い夏から、楽しみを追求できる秋がやっとはじまります(^-^)

ソフィア

カモワン・タロットのリーディングを学びたい方はスクール・ページへどうぞ。