ワシの盾で領域を守る☆シンボルのお話

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

さわやかな春は終わりを告げ、梅雨がやってくるのかなという微妙なお天気になってきました。

先日、公園の園路を散歩していると、カラスたちが桜並木の実のビュッフェを楽しんだ痕跡がありました。

落下した桜の葉叢に混じって、カラスの羽根がところどころにありました。

よく観察するとツヤツヤとして美しい。

カラスの羽根には「守護」「吉兆」のメッセージがあるそうです(^-^)

さて、今回はシンボルのお話です。

タロットは数多くのシンボルが描かれたカードですが、その中には繰り返し描かれているものがあります。

何度も出て来るということはタロットが何度も伝えたい、重ねて言いたいということかも知れません。

タロットの大アルカナ22枚を見渡すと――

盾のようなシンボルがいくつか見当たります。

すぐに目に入るのが『女帝』が抱えている盾と『皇帝』が玉座の側に立てている盾です。

盾というと、ギリシア神話の中で有名なのが、女神アテーナーの「アイギス」と呼ばれる盾です。

アテーナーとアイギス

アイギスは盾とされていますが、胸当てとして描かれることもあります。

ギリシア神話の英雄ペルセウスは、女神アテーナーに導かれながらメドゥーサの首を討ち取りました。

メドゥーサは、直視すると石に変わってしまうというゴルゴン3姉妹の内の1人です。

メドゥーサの髪の毛は蛇になっていて、その風貌は恐ろしいものだとされています。

恐ろしさのあまりに石のように固まってしまうのだともいわれています。

ペルセウスは討ち取ったメドゥーサの首を女神アテーナーに捧げ、それがアイギスに取りつけられたという話によって盾として描かれることが多いようです。

アイギスは、ゼウスが幼い頃にその乳で育てられたアマルテイアという山羊の皮でできています。

その山羊は外見がとても恐ろしいものだったとされています。

恐ろしい山羊から作ったアイギスに、恐ろしいメドゥーサの首をつけて更に恐ろしくしたわけです。

けれども、アイギスはあくまでも防御のためのものであり、女神アテーナーの持物です。

見た目の恐ろしさによって敵が退散し、戦わずして領域を守るというところが戦略の女神としてのアテーナーの神性を表しているのかも知れません。

日本でも聖域に邪な者が入るのを防ぐために、恐ろしい見た目の狛犬さんや仁王さんを入り口に設置してあります。

タロットの『女帝』の盾と『皇帝』の盾はどうでしょうか。

盾に描かれているのは鳥の王者であるワシです。

『女帝』と『皇帝』をタロット・マンダラの順に隣り合わせに置くと、盾はカップルの外側にあります。

カップルは自分たちの領域を外部から守っています。

これらのカードがタロット・マンダラの序盤に来るということは、人間にとって自分らしく生きるための時間・空間を確保することが人生の基本だと伝えているようです。

例えば、SNSなどを活用するとしてもある程度までにして、自分だけで本当の自分らしく過ごす時間や空間を大切にしましょうと『女帝』と『皇帝』のカードは教えてくれます。

「自分の聖域」で過ごすと「やって来た情報やものごとが自分に相応しいか」などを見極められるようになっていきます。

それって大切なことですよね。

聖域で過ごしている『星』のカードの樹の上には鳥のような黒い影が見えています。

ワシの盾で領域を守る『女帝』と『皇帝』の記事のときに、「守護」「吉兆」のカラスの羽根に出会ったのはシンクロなのかも知れません(^-^)

タロットのシンボルと神話のシンボルの繋がりは人生にたくさんの気づきをくれます。

ソフィア

カモワン・タロットのリーディングを学びたい方はスクール・ページへどうぞ。

うしかい座のイーカリオス☆星とタロットの象徴

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

今は桜の季節が終わったばかりの春ですね。

最近、ブログが星座づけっぽくなっているソフィアです(^-^)

タロットも星座も同じような象徴体系に基づいているので、互いのヒントの宝庫になるようです。

☆ ☆ ☆

「春の星座」とググってみると、春の夜空に観測される『春の大三角』の「うしかい座のアークトゥルス」「乙女座のスピカ」「獅子座のレグルス(あるいはデネボラ)」などの名前が出てきます。

他には「おおぐま座の北斗七星」から、「うしかい座のアークトゥルス」「乙女座のスピカ」「からす座」へと続く『春の大曲線』という日本で考案されたアステリズムもあります。

これらのアステリズムには入りませんが、かに座やこぐま座も春の星座として出てきます。

このように挙げていくと、アストロロジーで4月から6月あたりの誕生日の星座とされる「牡羊座」「牡牛座」「双子座」がなぜ出てこないのだろうと思う人もいるかも知れません。

誕生日に基づいたこれらの星座はアストロロジーで「太陽星座」と言われるもので、バースチャートなどで太陽が黄道十二宮のどの星座の方向にあるかで決まります。

夜空の星と違い、太陽が空を明るく照らしているので「太陽星座」は見ることができません。

昔は太陽がどの星座の方向にあるかで季節を言い表わすことがあったので、例えば「乙女座の季節」と言えば太陽がおとめ座の方角にある秋頃を示していたのです。

夜空に星を見上げて来た子どもの頃からの感覚とは異なっていますね(^-^=

前回のブログ『牛飼い、羊飼い、山羊飼い☆三段階と一致する?』で少し触れていた「うしかい座」には対応する神話があります。

「うしかい座」はイーカリオスという牛飼いが天に上げられたとされる星座です。

神話によると――

アッティカのイーカリオスは、各地を旅していた酒神ディオニュソスをもてなし、そのお礼としてブドウの栽培やワイン作りを教わった人物です。

イーカリオスはワインのすばらしさを広めようと、ワインを満たした革袋を載せた車を曳いて出かけ、羊飼いたちにふるまいました。


(『ワインを運ぶイーカリオス』パフォス発掘のモザイク画、3世紀)

ワインを飲み過ぎた羊飼いたちはいつもと違う行動をしたり、眠りこけたりしました。

初めての酒の酔いに驚いた羊飼いたちは毒を盛られたと勘違いをしてイーカリオスを殺し、土に埋めてしまいました。

その頃、イーカリオスの娘エーリゴネーは父親がなかなか帰ってこないのを家で心配していました。

そこに愛犬のマイラが帰ってきて、エーリゴネーをイーカリオスの埋められたところまで引っ張っていきます。

エーリゴネーは絶望のあまりにイーカリオスの埋められたすぐ側の樹で首を吊って死にました。

マイラも死を悼んで川に身を投げたと言われています。

これらのことに怒ったディオニュソスは、イーカリオスたちが手厚く弔われるまでの間、犯人の羊飼いたちの村に悲惨な罰を与えました。

神々はイーカリオスをうしかい座、エーリゴネーを乙女座、マイラを小犬座に変えて天に上げたと言われています。

農夫であるともされているイーカリオスの「うしかい座」は、地上性を象徴する動物である牛を飼っていることに重要な意味合いがあります。

「殺される≒死ぬ」イーカリオスは、わたしたちの中の地上性はいずれは死すべき部分であるということを教えてくれています。

殺したのが羊飼いであることもとても象徴的です。

この二者をブドウとワインに見立てることもできます。

わたしたちは瞬間の命と永遠の命の2種類を生きているようです。

たくさんのヒントに出会えるタロットと神話や星の探索の旅はわたしソフィアにとってとても楽しいものです(^-^)

ソフィア

 

変容の光は自我の死をもたらす☆星の神話とタロット

こんにちは。アントレへ、ようこそ。

まだまだ春めくにはほど遠い寒さのようです。

12月にはインフルの波を何とか凌いだのですが、わたしソフィアは1月の波には捕まってしまいました(^₋^ゞ

まだまだ寒いです。

心身ともに気を付けていきましょう。

さて、今回はさそり座とオリオン座の神話をタロットの象徴と通してみていきます。

前回のブログにオリオンを中心としたお話を載せていますので、まだご覧になっていない方はそちらからどうぞ。

『さそり座はオリオンを追う☆12星座の神話』

☆ ☆ ☆

『世界』のわし・さそり座

マルセイユ・タロットの『世界』のカードには、伝統的に、黄道十二宮の固定宮が四聖獣として描かれています。

水の固定宮であるさそり座がワシの象徴に置き換わっているのは、前回のブログに記載した通りです。

それでは「わし・さそり座」とその反対側にある「オリオン座」のお話をタロットの象徴で照らしてみていきましょう。

「地」と「火」の傾向

オリオンの出自は、「雄牛の皮を地面に埋める」というような神の恩恵による魔法的手段に基づいていますが、

「牛」は、四大元素の内の「地」の象徴の動物で、「地中に埋める」という手段も「地」の特徴を帯びています。

狩人であるオリオンは「棍棒」を振り上げた姿で星図に描かれていますが、

「棍棒」は「火」の象徴です。

「オリオン座」(版画)ヨハン・バイエルの『ウラノメトリア』 (アメリカ海軍天文台図書館)

地上の動物を狩ることを目的として、棍棒で力を振るうオリオンは「地」と「火」の傾向が強い人物です。

『手品師』は、「棍棒」と同じような「バトン」を片手に持ち、もう一方の手には「コイン」を手に持っています。

「玉」とも呼ばれる「コイン」は「地」の象徴です。

土色の地面や土色のテーブルもある『手品師』は「地」と「火」の特徴があり、オリオンと似ています。

オリオンも『手品師』も物質現実的で、パワフルです。

オリオンと『手品師』の「水」

オリオンはオイノピオンの娘メロペーを欲しがりました。

命の危険さえある難題を出すくらい、オイノピオン王とメロペーは全く縁談に前向きではありません。

「人や家畜を襲うすべての野獣のキオス島からの一掃」という難題の「野獣」にオリオン自身が入っていたのかも知れません。

実際にメロペーを襲った野獣だけは討伐し損ねたことになります。

相手の気持ちを全く汲み取る心のないオリオンは獣と言えるのかも知れません。

「感情」は「水」で象徴されますが、

『手品師』を見ると、テーブルの上には「カップ(杯)」が2つあります。

片方のカップには「水」のようなものが見えますが、もうひとつのカップには蓋がされています。

他者の気持ちを汲み取らないオリオンのように、『手品師』も相手の感情を汲んではいないようです。

『手品師』も自分の気持ちにだけ関心がある状態のようです。

ここまで見てみると、物語のこの段階のオリオンの人物像に最も近いのは『手品師』だと見当がつきます。

物質を見る目を失う

メロペーに乱暴をはたらいた結果、オリオンはオイノピオンに泥酔させられ、両眼を失明させられます。

オイノピオンの父神である「酒神ディオニュソス」が出てくることで「酩酊」「既存の認識の破壊」を思わせます。

この段階で、オリオンは物質次元にフォーカスする「目」を失いました。

メロペーの心を見ずに肉体のだけの物として判断していたような今までの「見方」をなくしたようです。

『手品師』の次の『女法王』では、天幕の端が逆さにした松明のような形になっています。

逆さの松明は「死」を意味する象徴です。

外の物質現実に意識を向ける『手品師』から一転して、天幕で周囲を遮蔽した『女法王』は黙想する様子のカードです。

古い認識の死を体験しながら、見動きできず、じっとしているオリオンは黙想のような状態になっていたかも知れません。

導く天の目

オリオンは盲目を癒すために東へ誘う神託を聞き、単眼のキュクロプスのハンマーの音を頼りに東へと赴きました。

東は「太陽の昇る方角」であり、ものごとを照らすことのできる太陽の明るさは知性を象徴します。

キュクロプスという名称は、ギリシア語で「キュクロ(輪・円)」と「オプス(目)」から来ていて、「丸い目」と翻訳することができ、それは天の目である太陽だとされています。

鍛冶神とされるキュクロプスは元々、天空神ウラノスの息子たちであり、天空神の系譜です。

盲目の中で、天空神のはたらきかける音を聞きながら東を目指すオリオンは、これまでのオリオンとは全く異なります。

「太陽を目指し走るオーリーオーン」(ニコラ・プッサン:メトロポリタン美術館所蔵)

『女法王』の冠の天辺には、キュクロプスの導きを思わせる黄金色の小さい太陽のような円が描かれています。

エオス・ヘリオス兄妹

オケアノスにたどり着いたオリオンの姿を見て、明け方を司る暁の女神エオスが恋におちたとされています。

エオスの司る「夜明け」は、精神の「目覚め」に通じます。

象徴的に描かれるオリオン座の7つの星のように、7(Ⅶ)という数をもつ『戦車』は大きな目をもつ美青年として描かれています。

星空の上に朝焼けのような朱色のある『戦車』の天幕は、エオスからもたらされた恩恵を表わしているかのようです。

さらにエオスに頼まれた太陽神ヘリオスが陽光で目を癒しました。

ヘリオス・エオス兄妹と親しむオリオンは、オルテュギア島で女神アルテミスに出会いました。

アルテミスに円盤投げを挑んだことによって大サソリが放たれたとも、アルテミスと親しくなるのを快く思わないアポロンによって大サソリが放たれたとも言われています。

毒針をもつ大サソリはオリオンに死をもたらします。

太陽の繰り返し

この神話の中では太陽を思わせる象徴が何度も出てきます。

最初はキュクロプスとして天の目である太陽が出てきましたが、次はヘリオスとして太陽が登場し、遂にはアポロンとして登場しています。

オリオンは天空神の鎚の音で導かれ、太陽神ヘリオスに目を癒され、太陽神アポロンの放った大サソリに殺されます。

光明の洗礼を何度も受けているようです。

「巨大な体格」で象徴された「オリオンの荒々しい自我」が陽光の中で段々と小さくなり、死を迎えます。

『太陽』には、これまでの他のカードと異なり、小さい人物が描かれています。

夜明けから明るさを増す朝日の中に、溶け込んで見えなくなっていく「オリオン座」の姿のようです。

大さそりとワシ

『世界』のカードに戻ってみると、この中心にいるのはイエス・キリストではありませんが、キリスト教のタンパンにそっくりです。

タンパンの四聖獣は、4つの共観福音書に当てはめられていて、天使はマタイ福音書、牛はルカ福音書、獅子はマルコ福音書、ワシはヨハネ福音書に当てはめられています。

他の福音書と比べて、ヨハネの福音書は天の神秘がその特徴で、ワシは天に昇ったイエスを象徴するともされているようです。

ワシの象徴やオリオンを刺したサソリの話から推測すると、『世界』の「わし・さそり座」は光の神秘のよる「昇天のサポーター」と言えるのかも知れません。

ポンペイのオリオンの家のモザイク画では、オリオンの背中には蝶の羽根がついています。

蝶は生命や魂の象徴であるアニマを表わします。

「ゼウスの意志によるオリオンの星座への変容」(2018年にポンペイのオリオンの家で発見されたモザイク画:ソフィー・ヘイ博士による撮影)

このモザイク画にも、オリオンが「自我の死」を祝す「逆さの松明」が天使のような存在によって掲げられています。

ソフィア

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