『手品師』の不思議な空色のバッグ
こんにちは。アントレへ、ようこそ(^-^)
少しずつ秋めいてきましたので、自然散策をまた始めようかなと思っているソフィアです。
今回は、わたし自身が以前から「もっと知りたい、もっとわかりたい」と思ってきた『手品師』の空色のバッグについてよく見ていきます。
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タロットを学び始めると、まず出会うのが大アルカナ22枚ですが、『愚者』以外の大アルカナの21枚をトランプカード(切り札)と呼びます。
その筆頭であるのがこの『手品師』です。
筆頭のカードらしく『手品師』にはⅠ(1)の数字が付いています。
その若い数字に符合するように、人物の姿は子ども、あるいは少年のような様子です。
立っている『手品師』の顔が、座っている『女法王』の顔と同じくらいの大きさになっているので、頭が子どもらしくちょっと大きめに描かれていることになります。
髪の毛は金髪っぽく黄色で彩色されています。
ヨーロッパ系の人たちには、子どもの頃は髪が「ベビー・ブロンド」で、成長するに従って茶髪や黒髪に変わるパターンが多いのだそうです。
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子どもらしく描かれた『手品師』は、伝統的に、徒弟や小姓の姿であるとされています。
徒弟とは、職業訓練制度の中で見習いに入ったばかりの身分で、日本風にいうと「丁稚(でっち)」です。
小姓とは、上位の騎士などに仕える貴族の若い子弟を意味します。
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『手品師』は若い力が満ち満ちているようで、肩幅やふくらはぎには元気のいい張りがあり、密度の濃そうな体をしています。
テーブルの上にたくさん物を並べている『手品師』は物質的傾向の高い人物のようです。
物を使ってあれこれ試行錯誤しながら楽しんでいます。
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テーブルに並んだ同系色の物たちに対し、少し趣が異なっているものがあります。
向かって右側の端にある手品道具のバッグは、テーブルの木肌色と反対色の空色で描かれていて異彩を放っています。
マルセイユ・タロットのカード作者たちはこのアイテムに特別の意味を込めてきているような感じがします。
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バッグには、空色の袋の部分、黄色い取っ手や口金があったり、バッグの中からニョロニョロした黄色い奇妙なものがはみ出ていたりします。
手品道具入れなので奇妙な感じがしても当然ですが、袋の部分の空色は天空の色であり、天界との関りを感じさせます。
「物質的傾向が高い」「物を使ってあれこれ試行錯誤」している人なのに「天界との関り」とはどういうことなのでしょうか。
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その秘密は、やはりバッグに隠れているようです。
取っ手の付け根にはオレンジの玉のような象徴があります。
日本語でも小振りな取っ手を「耳」と表現することがありますが、実はフランス語でも同様です。
耳(取っ手)が物質の象徴である玉についているバッグの持ち主である『手品師』は物に耳を傾ける人のようです。
空色のバッグにはもちろん口金のついた「口」があります。
どうやら『手品師』は物を介して神髄(本質)に耳を傾けているようです。
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職人が素材と対話する、作品と対話するという表現は、プロフェッショナルな領域でよく見受けられます。
ルネサンス期の大芸術家ミケランジェロは「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。 それを発見するのが彫刻家の仕事だ」と語ったとされます。
きっと石と深い対話をしていたのでしょう。
まだ徒弟の身分である『手品師』はこれからより深い対話ができる職人になっていくのです。
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マルセイユ・タロットの象徴には豊かな意味合いが隠されています。
タロットには学び深めていく醍醐味がたっぷりです。
何かと散漫だった暑い夏から、楽しみを追求できる秋がやっとはじまります(^-^)
ソフィア
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